eBOX-3310でWEC7:SDKのビルド
eBOX3310の立ち上げもほぼ終了し、これからはアプリケーション編に突入します。Windows Embedded Compact 7でアプリケーションを開発するにはPlatform Builderを使うことも出来ますが、今回はVisual Studio 2008を使うことを前提に話を進めます。Visual Studio 2008でアプリケーション開発をするためには、開発ターゲット用のSDKが必要となります。今日はそのSDKのビルドについてです。
最初にこのSDKについてですが、これはVisual Studioでアプリケーション開発をする際には必ず必要なものです。SDKにはターゲットデバイスがサポートしているAPIの一覧が含まれていて、アプリケーション開発時に使用できるAPIを参照するためのものだからです。仮にターゲットデバイス用ではないSDKを使用して待った場合、実行時のAPIコールでExceptionが発生して、期待する関数が呼び出されないことになります。WinCE/WECの場合、OSイメージには、開発者が必要とするモジュールを組み込むのですが、逆に言うと、必要のないモジュールは組み込まれません。例えばWindows Media Technology関連のモジュールが組み込まれていないシステムでは、これらの機能を呼びだそうとしても、ライブラリが含まれていないため動作しないということは容易に想像できると思います。
したがってOSイメージを構築する人は、カタログの構成などを変更した際に、SDKを構築し直し、アプリケーション開発者に提供する必要があります。またアプリケーション開発者は、新しいOSイメージが配布された際は、古いSDKをアンインストールし、新しいSDKをインストールしてアプリケーションの開発を進めることになります。極端なことを言うと、SDKが更新されるたび、すべてのアプリケーションの再ビルドが必要となるのです。それをできるだけ避けるには、(無理だけど)最初からカタログ構成を決めるか、カタログへは追加のみとすることで、上位互換性を保つといったことしかないので、その管理はシステム開発では重要となります。
さて前置きはこれくらいにして、PB7でのSDKのビルドについて話を進めます。最初にSolution ExplorerでSDKsを見つけ、そこを右クリックしてください。今回はSDKを新規に作成しますので、プルダウンメニューから「Add New SDK...」を選択します。
すると作成するSDKのPropertyを設定するダイアログが開きますので、必要な項目を入れていきます。GeneralではSDKの名前や、バージョン、会社名、ホームページのURLなどを設定できます。
Installでは「MSI File Name」をデフォルトのままではなく、適切なファイル名に変更してください。ここではeBox3300.msiというファイル名にしました。
CPU Familiesでは選択できるCPUのチェックボックスが現れるはずです。しかし一般にサポートしているCPUは一種類でしょうから、確認くらいで特に何もする必要はありません。
Development Languagesでは表示する言語を選択すわけではありません。ここではNative CodeとManaged Codeについての設定となります。Native Codeは当然標準のサポートですが、「Platform specific macro」の欄には、SDK用の環境変数を設定することができます。Managed Codeでは、.NET Compact Frameworkをカタログに取り込んでいる場合のみ、サポートするかどうかを選択できます。
必要な項目をすべて入力し、「OK」をクリックすると、Solution ExplorerのSDKsの下には、作成したSDK(ここではeBox3300)が表示されていることが確認できます。
あとはこのSDKをビルドするだけですが、ビルドしたいSDKを右クリックして「Build」を選択するだけでビルドが始まります。いたって簡単です。
ビルド自体は特に問題なく終わるでしょうから、ビルドが終了したらもう一度SDKを右クリックして「Explore」を選択してみてください。ビルドしたSDKのフォルダがWindowsのエクスプローラーで開かれます。
このフォルダにある「MSI」というフォルダに目指すSDKがインストーラー形式のmsiファイルとして保存されています。いちいち探すよりかなり簡単なので、このプルダウンメニューから選択することをお勧めします。
そして今回作成したSDK、eBox3300.msiをダブルクリックすると、インストーラーが起動します。このあたり、よくできています。インストーラーにSDKの名前である「eBox3300」がきちんと反映されていることを確認してください。
インストーラーの途中で出てくるEULA(End-User License Agreement)はデフォルトのものも使用出来ますが、SDK作成時にファイルを指定することで、独自のものを埋め込むことも可能です。
SDKのインストールは、指示に従って進めばいいだけですので、特に迷うことはないでしょう。インストールが無事に終了すると、以下のダイアログが表示されてお終いです。
このようにSDKの作成とインストールは、その手順さえ知っていれば簡単な作業です。実はSDKはこの一連の作業よりも、開発現場での運用の方がより難しいと考えています。OSイメージの更新とSDKの更新はペアであるべきですが、どうしてもおろそかになりがちです。特にアプリケーションを外部委託するなど、開発現場が分散したときには、その管理・運用は面倒なものとなってきます。この件に関しては、開発の初期段階で、SDKの適用ルールを決め、全体でそのルールを守ることを徹底するようにしてください。
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